将棋界のしくみ
2018年3月29日 (木) 18:28時点における>. .による版 (→王将戦)
- 最近、藤井聡太さんの活躍によって将棋が注目されているが、段位やクラスなど、にわか通にはわからない事が多い。
- よってまとめておく。
七大タイトル
- プロ棋士になれば誰もが目指すタイトル。
- タイトル戦と、一般戦の違いは「前回のタイトル保持者に、予選を勝ち抜いた挑戦者一名が挑戦する」という点。
- よってタイトルを持っていても予選から参加しなければならない一般棋戦とは区別される。
- プロ棋士は、タイトル未保持の場合は「○○九段」などと段位で、タイトルを持っている場合は、「△△名人」(あるいは単に「名人」)とタイトル名で呼ばれる。
- タイトルを複数持っている場合は、もっとも格式の高いタイトルで呼ばれるが、名人と竜王を取っている場合は、例外的に「□□竜王・名人」となる。
名人戦
- 1612年から存在する、もっとも歴史のあるタイトル。
- 主催は、朝日新聞社と毎日新聞社(共催)。
- ただし昔は世襲制であり、現在のように実力制になったのは1937年から。
- 5期連続タイトル獲得、あるいは通算7期タイトル獲得で永世名人の称号が贈られ、初代(大橋宗桂)からの通算で第○○代名人となる。
- ただし実際に名乗れるのは引退後。
- これは他のタイトルも同じ。
- 大きな偉業を成し遂げた棋士は、例外的に現役中に永世名人を名乗ることが許される。実例は十五世名人・大山康晴と十六世名人・中原誠。
- 現役の棋士で永世名人の資格保持者は、十七世名人・谷川浩司、十八世名人・森内俊之、十九世名人・羽生善治の3名。
- 若いころに「神武以来の天才」(要するに日本建国以来の天才)ひふみんこと、加藤一二三氏ですら名人獲得は一期のみ。それでもすごい事なのである。
- 優勝賞金は2000万円(推定)
順位戦
- 要するに名人戦の予選。
- プロ棋士が、名人戦に参加するにあたり、その時々の実力に応じて在籍するクラス。
- 下記のA級の総当たり戦で優勝したもののみ、前回の名人に挑戦できる。
- 段位は一度昇段すると下がらないが、クラスは降格がある。
- ただし順位戦には、将棋連盟から棋士に支払われる給料や賞与の査定も兼ねているので棋士にとっては大変である。
- 給料と賞与については、連盟の改革の一環と、一部から「勝負師が給料をもらうのはおかしい」という意見が出たため、縮小された模様。
- 名人戦(決勝戦)は7番勝負で、先に4勝すれば勝ち。
- 人数や所属棋士は、執筆現在(2017年度)
クラス名 | 概要 | 人数 | 主な在籍棋士(2017年度) |
---|---|---|---|
名人 | 1名 | 佐藤天彦 | |
A級 | 最上級。このクラスのリーグ戦で優勝すると晴れて挑戦者となれる。 | 10名(原則定員) | 羽生善治(竜王・棋聖)、渡辺明(棋王)、久保利明(王将)、佐藤康光(日本将棋連盟会長)など |
B級1組 | ここから総当たり制になる。 | 13名(原則定員) | 谷川浩司(元日本将棋連盟会長)、菅井竜也(王位)など |
B級2組 | この組から一部の棋戦で一次予選免除となる。 | 25名(定員なし。以下同じ) | 先崎学、中村太地(王座)など |
C級1組 | 37名 | 杉本昌隆(藤井聡太の師匠)、佐々木勇気(藤井聡太の30連勝を阻止)など | |
C級2組 | 基本的にはここがスタート地点。 | 50名 | 藤井聡太など |
フリークラス | どのクラスにも所属していない、C級2組から降格した棋士、もしくは三段リーグ次点2回で昇段した棋士。 原則として10年以内に所定の成績を収めて昇級しないと引退となる。 過去に一度C級2組から降格してから復帰した棋士は2名のみ。 |
11名 | (記載自粛) |
フリークラス(宣言) | フリークラスを自ら宣言した棋士。順位戦に戻れない代わりに15+α年もしくは65歳まで現役を続行可能。 理由は「タイトルに集中したい」「後進の育成に力を注ぎたい」など様々。 |
14名 | 森内俊之など |
竜王戦
- 名人位と並んで最高位とされるタイトル。
- 主催は読売新聞社。
- 竜王戦そのものは1987年開始だが、その前身も含めると1950年開始となり、実力制名人戦に次ぐ歴史を持つ。
- 七大タイトルで最も優勝賞金が高く(4320万円)、かつランキング戦のクラス別の優勝者と準優勝者にも賞金がでる、棋士にとってはおいしいタイトル。
- てかそもそも他のタイトルの賞金は非公開。これだから読売は金で権威を(ry
- そのため、某渡○明のように「竜王戦のみを目指して将棋を指している」と呼ばれる棋士がいるほど。
- 名人戦と同じく、ランキング戦制を取っているが、名人の順位戦と異なり、可能性としてはどのクラスからでもタイトルを狙える。
- ただし当然のことながら、下位ランクになるほど本選出場には多くの労力と実力を要する。
- 名人戦に比べると、特に若手実力者にはハードルが低いと言えなくもない。
- 最年少竜王は羽生善治(19歳)。ちなみに名人(実力制)の最年少は谷川浩司(21歳)
- アマチュア枠5、女流棋士枠4、さらには奨励会員枠1も設けられている
ランキング戦
- 名人戦の順位戦に相当。
- ランキング戦は、順位戦と独立しているわけでなく、順位戦の順位とリンクしている。
- 竜王戦(決勝戦)は7番勝負で、先に4勝すれば勝ち。
- 人数や所属棋士は、第31期(2017年冬 - 2018年秋)
クラス名 | 概要 | 定員 | 主な在籍棋士(第31期) |
---|---|---|---|
竜王 | 1名 | 羽生善治 | |
1組 | 上位5名が本選出場 | 16名 | 渡辺明、久保利明、広瀬章人、豊島将之など |
2組 | 上位2名が本選出場 | 16名 | 佐藤天彦、森内俊之、杉本昌隆など |
3組 | 優勝者1名のみ本選出場 | 16名 | 佐々木勇気など |
4組 | 優勝者1名のみ本選出場 | 32名 | 谷川浩司、先崎学(休場)など |
5組 | 優勝者1名のみ本選出場 | 32名 | 神谷広志、藤井聡太など |
6組 | 優勝者1名のみ本選出場 | それ以外 | 佐々木大地 |
王将戦
- 1951年年に開始。
- 一般棋戦としては1950年開始。
- 主催はスポーツニッポン新聞社及び毎日新聞社。
- プロ棋士なら全員に参加資格がある。
- 予選には一次予選と二次予選がある。
- 一次予選 - 順位戦のB級1組以下の棋士によるトーナメント方式。各組ごとの優勝者が二次予選に進む。
- 二次予選 - トーナメント方式で、18名の中から決勝リーグに進む3名の棋士を選ぶ。
- 参加者は、前期挑戦者決定リーグ陥落者(3人、二次予選2回戦からの参加)、(王将以外の)タイトル保持者、順位戦A級の棋士、永世称号者、一次予選通過者
- 挑戦者決定リーグは、二次予選通過の3名とシード者(前期挑戦者決定リーグ残留者と王将戦敗者)4人の計7人で総当たり戦で行い、挑戦者1名を決める。
- 王将戦は7番勝負で、先に4局勝てば王将となる。
- 現在(2017年度)のタイトルホルダーは久保利明。
- 優勝賞金は300万。
- いくら何でも安すぎじゃ?これでは女流棋士のタイトル並みである。
- 番勝負に勝った棋士がスポニチの紙面向けにおかしな写真を撮影することで有名。俗に「勝者罰ゲーム」といわれている。
- なんでも器用にこなしそうな羽生善治はともかく、あまりそんな事はしなさそうな渡辺明が結構乗るのは意外参考。
- 七番勝負であるにも関わらず、当初は「先に三勝した方が勝ち」で、かつ「それ以降は香落ち(三番勝った方が香を落とす)と平手を交互に行い、必ず七番まで指す」という「三番手直り」(先に3番勝った方が、ハンディをつけられる)の指し込み制であった。
- これは「名人が指しこまれる(3敗してハンディを与えられる)ことはあり得ない」という当時の名人・木村義雄自身が発言。
- 当然、升田幸三を筆頭に反対派がいたが、結局このルールは採用された。
- 皮肉なことに第1回王将戦で「反対派」の升田幸三が「賛成派」の木村義雄王将を4勝1敗で指しこみ、升田が第6局で香落ちで指すことを拒否する事件(陣屋事件)が起きた。
- さらに1955年、またも挑戦者の升田幸三が大山康晴王将に対して3勝0敗とすると、第4局で升田が香落ちで大山に勝ち、実際に「名人が香を引かれて負ける」事態が起こった。
- 現在は「三番手直り」から「四番手直り」となり、さらに「先に4勝した方が勝(対局は終了)」というルールになっているため、実際に香落ちで指すことはなくなったが、ルール上は残っている。
- 4勝0敗となると、実際には第5局は指されないが「手直り」(勝った側の香落ち)が記録される。
奨励会(新進棋士奨励会)
- プロ棋士の登竜門。
- 正式名称は「社団法人日本将棋連盟付属新進棋士奨励会」と長いので、日本将棋連盟のページですら「奨励会」と書いてある。
- 入会には毎年8月の入会試験に合格する必要がある。合格率は1~2割。人数にして30~40人程度。
- 試験は誰でも受験できるわけでなく、下記の条件がある。それで合格率が上記である。
- 19歳以下である事(下限はなし)
- プロの棋士に推薦を受けた者、あるいは将棋連盟主催の小中学生向けのアマチュア大会で好成績の者
- 試験は誰でも受験できるわけでなく、下記の条件がある。それで合格率が上記である。
- ちなみに一番下の六級ですら、アマチュアの段位で三~五段程度
- これはアマチュアの大会ならいきなり全国大会に出られるレベル。
- 退会に関する年齢宣言は厳しく、満21歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる(例外規定あり)
- 奨励会の三段リーグで上位2名になれば晴れて四段となり、プロ棋士となる。上記クラスはC級2組に編入。
- プロ棋士になれるのは年4名であり「東大は普通の人でも入れるが、プロ棋士は天才にしかなれない」と言われる。
- 三段リーグで次点(3位)を2回取ると前項のフリークラス編入で四段になるルートもあるが、こちらはこちらで険しい道である。
- なおあの藤井聡太ですら三段リーグでは13勝5敗・勝率0.722と苦戦している。
- ちなみにプロ初年度の成績は61勝12敗・勝率0.836である。
- いまさら書くまでもないが、2017年度、藤井聡太は最多連勝(29・※連盟記録)、最多勝利、最多対局数、最高勝率の四冠を達成した。
- なお、1967年以来の四冠達成者は内藤國雄と羽生善治のみ。ただし羽生は4回達成している。
- プロ棋士になれるのは年4名であり「東大は普通の人でも入れるが、プロ棋士は天才にしかなれない」と言われる。
- 三段だけ人数が極めて多いことに注目。それだけ激戦区なのである。
- なお奨励会を15分取材した記者いわく「二度と行きたくない」。
- 会員同士、会話どころか目も合わせず、室内は将棋の駒を打つ音しかしないとか。
- 元奨励会員も「奨励会にいる間は将棋を楽しいと思った事は一度もない」んだそうである。
※人数は関東奨励会/関西奨励会(三段は両者の合計。2018年3月末現在)
級・段 | 概要 | 人数 |
---|---|---|
三段 | プロ一歩手前の人たち。そのためリーグ戦は熾烈を極める。アマからの編入制度あり。 | 36名 |
二段 | 9名/9名 | |
初段 | 13名/10名 | |
一級 | 13名/4名 | |
二級 | 女流棋士にはここでなれる。段・級は奨励会内の女流棋戦の昇段級規定による。 | 12名/5名 |
三級 | 7名/6名 | |
四級 | 8名/5名 | |
五級 | 9名/5名 | |
六級 | 最年少入会は9歳 | 14名/11名 |
研修会
- 奨励会の下位組織。
- 目的は「将棋を通じて健全な少年少女の育成を目指すための機関、また、女流棋士養成機関」とのこと(連盟の研修会ページより)
- 必ずしもプロ棋士の養成を目的にしているわけではない。
- 奨励会不合格者の救済措置としての役割もある。
- クラスは、公式HPではS~Fまでだが、実際にはG・Hクラスや未入会者(テスト生)のクラスが存在する。
- 対象者
- 一般研修生:20歳以下でアマチュア有段者の少年少女(師匠は不要)
- 女流棋士を目指す25歳以下のアマチュアの女性(師匠が必要)
- 例会:毎月第2、第4日曜日(原則)
- 入会試験
- 2回の例会で計8局指し、実力に見合ったクラスに編入される。
- ちなみにFクラスですら、アマチュア二段相当の実力が必要。
- 奨励会もだが、研修会も大概難しい。
- 対局は研修会生同士でなく、研修会生とプロ棋士が行うこともある。
- もちろん手合い割あり。
クラス | 概要 |
---|---|
S | 昇格した時点で18歳以下であれば奨励会6級に編入可能 |
A1 | |
A2 | 昇格した時点で15歳以下であれば奨励会6級に編入可能 |
B1 | |
B2 | |
C1 | 女流3級の資格が得られる(ただし通算対局数48局以上)。 |
C2 | CクラスからA・B級への昇格規定は、直近の対局で8連勝、12勝4敗、14勝5敗、16勝6敗、18勝7敗のいずれかを達成すること。 |
D1 | 女流棋士を目指す者で、23歳以上のものは、このクラス以上の成績で研修会入りする必要あり。 |
D2 | |
E1 | |
E2 | |
F1 | FクラスからC・D・E級への昇級規定は、直近の対局で6連勝、9勝3敗、11勝4敗、13勝5敗、15勝6敗のいずれかを達成すること。 |
F2 | F1クラスへの昇級規定は、直近の対局で5連勝・7勝3敗・9勝4敗のいずれかを達成すること。 |
G | F2クラスへの昇級規定は、直近の対局で3勝3敗を達成すること。 |
H | |
テスト生 | 入会テスト生が在籍するクラス。 |